過少申告加算税について

通関士

納税申告をした後に、修正申告もしくは増額更生を受けた場合、当初申告の際に適切な納税申告をしなかったとされ、行政制裁として過少申告加算税が課されます。このページでは過少申告加算税について解説します。

適用税率

過少申告加算税には、修正申告・増額更生の状況タイミングによって0%、5%、10%の3段階存在します。

 原則:10%
 税関より該当申告分の関税について調査通知がある前に修正申告:0% (その他正当な理由がある場合)
 税関より該当申告分の関税について調査通知後~更生決定予知前に修正申告もしくは増額更生:5%

加重過少申告加算税

修正申告や増額更生によって納付すべき増差税額が当初申告税額と50万円との多い額を超える場合は、超える部分の増差税額に5%を乗じて計算した加重過少申告加算税が課されます。これは、無申告加算税が原則15%であるのに対し、過少申告加算税は原則10%と設定されており、本来支払うべき税額の一部を支払っておくだけで税率の低い過少申告加算税が適用されることにより、行政制裁が軽減されてしまう格差をなくすための処置です。

計算方法・端数処理について

ルール1:過少申告加算税額 = 過少申告加算税額 + 加重過少申告加算税
ルール2:過少申告加算税額 = 増差税額 × 適用税率
ルール3:増差税額が当初申告税額と50万円との多い額を超える場合は、超える部分の増差税額に5%を乗じて計算した加重過少申告加算税が課される。 
加重過少申告加算税 = { (増差税額 - 基準額) の1万円未満切捨額 } × 5%
※基準額は、当初申告税額と50万円との多い額
※増差税額の10,000円未満は切り捨てとする。(増差税額が10,000円未満の場合は過少申告加算税は課されない。)
※計算された過少申告加算税の100円未満を切り捨てとし、合計額が5,000円未満の場合は課されない。

例題

問題1

下記輸入貨物Xを輸入納税申告したが、申告内容の誤りがあり、輸入許可日から4か月後に下記の通り修正申告を行った。この場合の過少申告加算税額を求めよ。ただし、当が輸入納税申告について、税関からの調査通知がされたものの実地調査は受けておらず、増額更生の予知をされていないものとする。

輸入貨物X

当初申告:課税標準 4,582,725円 適用関税 3.5%

修正申告:課税標準 5,582,725円 適用関税 4.5%

解答1

増差税額算出⇒基準額比較⇒過少申告加算税計算

当初申告時の関税額:4,582,000円 (1000円未満切捨) × 3.5% = 160,370円 ⇒ 160,300円

修正申告時の関税額:5,582,000円 (1000円未満切捨) × 4.5% = 251,190円 ⇒ 251,100円

増差税額 = 251,100円 - 160,300円 = 90,800円 ⇒ 90,000円 (1万円未満切捨)

基準額は、50万円 (160,300円 < 50万円)

増差税額が基準額を下回るため、加重過少申告加算税は発生しない。

税関からの調査通知がされたものの実地調査は受けておらず、増額更生の予知をされていないため、過少申告加算税の適用税率は5%となる。

過少申告加算税額 = 90,000円 × 5% = 4,500円

計算された過少申告加算税額が5000円未満のため、今回のケースでは課されない。

 <答え> 0円 (課されない)

問題2

A社は、輸入許可後において税関からの調査に基づき、修正申告を行った後、更に税関から増額更生を受けた。その際、納付した関税額が下記である。この場合に、A社が修正申告時および増額更生時に支払うべき過少申告加算税額を求めよ。

当初申告時の関税額:486,400円

修正申告時の関税額:668,200円

増額更生時の関税額:715,500円

解答2

【修正申告時に課される過少申告加算税】

基準額は、50万円 (486,400円 < 50万円)

税関からの調査に基づき修正申告を行っているため、過少申告加算税の適用税率は10%となる。

修正申告時増差税額:486,400円 ⇒ 480,000円 (1万円未満切捨)

過少申告加算税 = 480,000円 × 10% = 48,000円

増差税額が基準額を下回るため、加重過少申告加算税は発生しない。

【増額更生時に課される過少申告加算税】

増額更生時増差税額:715,500円 ⇒ 710,000円 (1万円未満切捨)

増額更生を行っているため、過少申告加算税の適用税率は10%となる。

過少申告加算税 = 710,000円 × 10% = 71,000円

基準額は、50万円 (486,400円 < 50万円)

増差税額は、668,200円 + 715,500円 = 1,383,700円

※以前に同一案件に対して、修正申告や増額更生を行っている場合には、その額も合計して増差税額を求める。

増差税額が基準額を上回るため、加重過少申告加算税が発生する。

加重過少申告加算税額 = { (増差税額 ー 基準額)の1万円未満切捨額 } × 5%

{ (増差税額 ー 基準額)の1万円未満切捨額 } = 1,383,700円 - 50万円 = 883,700円 ⇒ 880,000円 (1万円未満切捨)

加重過少申告加算税額 = 880,000円 × 5% = 44,000円

過少申告加算税 = 過少申告加算税 + 加重過少申告加算税額 = 71,000円 + 44,000円 = 115,000円

 <答え> 修正申告時:48,000円 増額更生時:115,000円 合計:163,000円

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